
ジョイント・バイ・ジョイントって何ですか?

どうやってその理論を使うの?
このような声にお答えします。
本記事では、ジョイント・バイ・ジョイント理論について紹介します。
本記事を読むと、ジョイント・バイ・ジョイント理論の活用方法を知ることができます。
ジョイント・バイ・ジョイント
ジョイント・バイ・ジョイントは、ファンクショナルトレーニングを考案した理学療法士のGray Cookをはじめ、Michael Boyleが考えたアプローチです。
この理論は、ファンクショナルトレーニングの原則でも触れらており、『分離と協同』にあたります。
分離と協同とは
人間のカラダには、骨と骨を繋ぐ関節が68個あります。各関節には、適切な可動域(動く範囲)が存在し、大きく2つの役割に分類されます。
それが、動き(Mobility Joint)と固定(Stability Joint)です。
例えば、肩は大きく回せるので、動きになります。しかし、肘は、曲げ伸ばししか出来ないので、固定にあたります。
このように関節を2つに分類して考えたのが、ジョイント・バイ・ジョイントの土台となっていますが、そもそも関節とは、何のことでしょうか?
関節とは
関節は、骨と骨が連結する部分を指します。骨と骨の間には、潤滑油である滑液が存在し、スムーズな関節の曲げ伸ばしを可能にしています。
関節間に存在している滑液や、骨をコーティングしている軟骨に何かしらの不具合が生じると、変形性関節症に陥ることがあります。これは、高齢者に多くみられる疾患です。この関節は、部位によって形状が異なります。例えば、股関節は大きく回りますが、膝関節は曲げ伸ばししかできませんよね?それは、関節の形状が違うからです。
関節の形状
※軸とは、関節が動く際の軸の数を表します。軸の数が多くなるほど、自由に大きく動かすことが出来ます。(可動性:1軸性 < 2軸性 < 多軸性)
部位 | 形状 | 軸 |
肩関節、腕橈関節(肘) | 球関節 | 多軸性 |
股関節 | 臼状関節 | 多軸性 |
膝関節、中手指節関節(手指) | 顆状関節 | 2軸性 |
椎間関節、足根間関節(足) | 平面関節 | 2軸性 |
橈骨手根関節(手首) | 楕円関節 | 2軸性 |
中手手根関節(手指) | 鞍関節 | 2軸性 |
腕尺関節(肘)、指節間関節(手指) | 蝶番関節 | 1軸性 |
距腿関節(足首) | 螺旋関節 | 1軸性 |
上・下橈尺関節(前腕)、正中環軸関節(首) | 車軸関節 | 1軸性 |
仙腸関節、脛腓関節(下腿)、手根中手関節(手)、手根間関節(手) | 半関節 | なし |
一覧を見て分かる通り、関節は、多方向性のものと一方向性のものが存在します。この解剖学的な考え方を元に、ジョイント・バイ・ジョイント理論では、動き(モビリティ関節)と固定(スタビリティ関節)に分類しています。
モビリティ関節とスタビリティ関節
スタビリティ関節とは、大きな動きに適さない関節を指し、大きな動きに適している関節をモビリティ関節と呼びます。
関節 | 役割 |
頚椎 | スタビリティ関節(固定) |
手関節 | モビリティ関節(動き) |
肘関節 | スタビリティ関節(固定) |
肩甲上腕関節(広義でいう肩関節) | モビリティ関節(動き) |
肩甲胸郭関節 | スタビリティ関節(固定) |
胸椎 | モビリティ関節(動き) |
腰椎、仙腸関節 | スタビリティ関節(固定) |
股関節 | モビリティ関節(動き)/スタビリティ関節(固定) |
膝関節 | スタビリティ関節(固定) |
足関節 | モビリティ関節(動き) |
足部 | スタビリティ関節(固定) |
上記の表で、手部から肩部を見ると、スタビリティ関節とモビリティ関節が、隣り合わせに位置しています。これは他の部位でも見られます。
これから分かる通り、関節は、隣の関節と相互に関係し合い、動作を作っています。そのため、例えば腰痛に悩まされていた時に、上下の関節へアプローチをかけると解消することがあります。これは、まさにジョイント・バイ・ジョイント理論にのっとった治療を行ったためです。
例)スクワット編
トレーニングで最も有名であるスクワットを例に解説します。
スクワットは下半身を鍛える種目で、①しゃがみ込む②立ち上がるを繰り返すトレーニングです。その際のフォームに関する注意点は沢山ありますが、『膝が足より前にでないように』と指導を受けたことはありませんか?または耳にしたことがあるのではないでしょうか?
これは、お尻の筋肉に刺激を入れる意図もありますが、スタビリティ関節である膝関節の動きを抑えて、モビリティ関節である股関節の動きを拡大するためでもあります。
特に若年層から高齢者まで、モビリティ関節である股関節の動きが悪く問題になることが多いです。
まとめ
ジョイント・バイ・ジョイント理論は、解剖学的に見ても合理的な方法です。特にモビリティ関節に注目して、トレーニングすると効果を発揮します。